とちぎ居場所インタビュー企画、第2弾‼︎
今回はLINE相談窓口「お母さんのほけんしつ」で、相談支援員をされている”Wさん”にお話を伺ってきました。お母さんのほけんしつは、NPO法人キーデザインが運営している、子どもの不登校に悩む保護者向けの無料LINE相談です。
インタビュアーである私の目線で記事にさせていただきます。どのような思いを持って、保護者のみなさんのご相談に乗っていらっしゃるのか、伝わるものがあれば幸いです。ぜひご覧ください。
文字だからこそ伝わるもの
「どうしたらいいですか?」
そんな言葉から始まる相談は、日常的に届きます。答えの出ない問いだとわかっていても、その裏にあるのは、張りつめた糸のような不安と孤独。自分の子どもが学校に行けなくなったとき、保護者は自分を責め、出口のない森に一人で迷い込んだような気持ちになります。
「私は、その人が見ている景色を、自分ごとのように見たいと思ってやりとりをしています」
そう語るのは、NPO法人キーデザインのLINE相談「お母さんのほけんしつ」で活動する支援員・Wさんです。相談文の言葉をただ表面的に読むのではなく、その行間にある息づかいや、沈黙の背景にまで心を寄せて対話を続けています。
「LINEは文字だけのやりとりなので、“語尾”一つにもすごく気をつかいます。『〜ですよね』という言葉が、時には決めつけに感じられてしまうかもしれない。だから私は、より丸みのある言葉を選ぶようにしているんです」
相談はいつも、子どもの話から始まります。でも、やりとりを重ねるうちに、ぽつりぽつりと“本当の悩み”が浮かび上がってくる。育ってきた家庭環境のこと、パートナーとの関係、心の奥底にあった「自分がこんなふうに感じてはいけない」という思い。

「信頼関係が少しずつできてくると、まるで氷が解けるみたいに、話が深まっていくんです。“子どもの不登校”という出来事の裏に、こんなに多くのことを一人で抱えていたんだって気づくことがあります」
Wさんの元には、長くやりとりを続けている人もいます。中には2年以上続いている方も。
自分の言葉が誰かの人生を救う瞬間
「あるお母さんは、最初は本当に余裕がなくて『どうすれば学校に行くようになりますか?』って、焦るように尋ねてきました。でも、少しずつ会話が変わっていって。”今では子どもと一緒に過ごせる時間を大切に思えるようになりました”って言ってくれて…涙が出ました。私の言葉で誰かが前を向けるようになることがあるんだって、救われるような気持ちになりました」

LINE相談のやりとりは、表情などは目に見えません。答えもはっきりしないまま、途中でやりとりが止まってしまうこともあります。でも、Wさんは信じています。
「言葉のやりとりがしっかり“キャッチボール”になったとき、お母さんの表情は見えなくても、その人の考え方が少しずつ変わっていくのがわかるんです。あ、腑に落ちたんだなって。そこまで届けば、あとはその人自身の力で回復していくことができると信じることができる」
孤独や不安がふくらんで、「もう消えてしまいたい」とまで思ってしまうお母さんが、ほんの少しでも心をゆるめられる場所。ママ友にも言えない、家族にも見せられない本音を、そっと打ち明けられる場所。
それが、Wさんにとっての「お母さんのほけんしつ」です。
私たちの背中を後押しするもの
「私たちは、解決策を押し付けるようなことはしません。むしろ、ただ“話せる場所”であることが大切なんです。どこにも所属できず、宙ぶらりんな思いを抱えている人たちにとって、ここが“最後の砦”になることもある。そんな場所として続けていけたらと思っています」
最後に、マンスリーサポーターの方々への感謝を語ってくれました。
「無料でこの相談が続けられているのは、サポーターの皆さんが支えてくださっているおかげです。目には見えない気持ちの循環が、この社会を少しずつ優しくしてくれる。その“見えない力”に、私たちは背中を押されています」
静かな言葉の裏にある、強い思い。
今日もまた、誰かの“見えない苦しみ”に、そっと光が灯されているのです。
「お母さんのほけんしつ」をもっと知りたい方
お母さんのほけんしつは、NPO法人キーデザインが運営する、保護者向けの無料LINE相談窓口です。ご関心のある方は下記より紹介ページをご覧ください。
また、お母さんのほけんしつは自治体等からの補助・助成などはなく、個人や企業のみなさまのご寄付で成り立っています。ぜひ相談窓口を支えていただけませんか? 月々1,000円〜の継続寄付サポーター、もしくは単発でのご支援が可能です。
LINEという文字だけのやり取りの難しさを伺った時の事。”行間の息遣いや沈黙の背景に思いを巡らせている”と仰って、そうした言葉のキャッチボールを繰り返す中で、相談者との信頼関係を築かれているのだと感じました。相談では、解決策を伝えるのではなく、家族にも、ママ友にも言えない本音を言える場である事を大切にしているそうです。そんな思いで携わるWさんだからこそ、この人に話してみようなるのだと思います。自身の豊富な経験と熱い想いを持ちながら、お母さん自身のチカラを信じて寄り添う姿が印象的なWさんでした。(たより編集部)