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おたより#009 年末年始を前に、子どもとの関わりに迷うお母さんお父さんへ

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この時期になると、不安が急に大きくなる理由

 12月の後半に入ると、理由ははっきりしないのに、気持ちが重くなることがあります。朝起きた瞬間から、胸の奥に小さな石が入っているような感覚。テレビや街の雰囲気は明るいのに、自分だけが取り残されているような気がしてくる。そんな感覚を抱えたまま、年末年始を迎えようとしている保護者の方も少なくないと思います。

 子どもが不登校になってから、時間の感じ方が変わったという声をよく聞きます。周りはどんどん前に進んでいるように見えるのに、家の中だけが止まっているように感じる。冬休みが始まると、その感覚はさらに強くなります。学校という区切りがなくなり、次に向かう場所が見えなくなるからです。

 実際、保護者の方からはこんな言葉が出てきます。「年末が近づくと、なぜか涙が出そうになる」「休み明けのことを考えると、夜に目が覚める」「子どもは落ち着いているのに、自分のほうが不安でいっぱいになる」。子どもの状態が不安なのではなく、先が見えないことそのものが怖くなっているのかもしれません。

 でも、その不安は異常でも、弱さでもありません。むしろ、ここまで子どもと向き合ってきたからこそ出てくる感情です。不安になるのは、それだけ真剣だった証拠です。

年末年始は、いつも以上に気を遣う季節

 年末年始は、人との距離が一気に近くなる時期です。親戚の集まり、久しぶりの知り合いとの再会、何気ない近況報告。その中で、不登校という話題はどうしても浮かび上がりやすくなります。

 「学校はどうしているの」と聞かれたらどうしよう。子どもの前で何か言われたらどうしよう。そう考えるだけで、体がこわばる方もいるでしょう。行かないほうがいいのか、行ったほうがいいのか。その判断だけでも、心はすり減ります。

 ここで知っておいてほしいのは、年末年始の集まりは「乗り越えるイベント」ではないということです。行かなければならないものでも、我慢大会でもありません。行かない選択も、途中で帰る選択も、立派な選択です。

 実際に、短時間だけ顔を出して帰ったご家庭もあります。子どもは参加せず、親だけ挨拶に行ったという方もいます。あらかじめ帰る時間を決めておくことで、気持ちが楽になったという声もありました。どれも間違いではありません。

 もし何か聞かれたとしても、説明責任を果たす必要はありません。今はゆっくり過ごしています。それだけで十分です。理解されなくてもいいし、納得されなくてもいい。年末年始は、親子の安心を守ることを最優先にしていい時期です。

冬休みの時間は、空白があっていい

 冬休みに入ると、生活のリズムが変わります。起きる時間が遅くなり、ゲームや動画の時間が増える。それを見て、不安になる保護者の方も多いと思います。

 でも、子どもにとって「何も予定がない時間」は、決して無意味ではありません。学校に行っていない間も、子どもはずっと気を張っています。外に出なくても、家の中で心をすり減らしていることもあります。冬休みは、その緊張を一度ほどく時間でもあります。

 何かをさせなければ、と思うほど、親の声かけは強くなります。でも、やらせようとすればするほど、子どもは動かなくなることもあります。それは怠けているからではなく、これ以上頑張れない状態だからです。

 生活リズムも、完璧に整える必要はありません。昼夜逆転にならない程度でいい。食事が取れていればいい。外に出られない日があってもいい。崩れ切らなければ、それで十分です。

 ゲームや動画も、安心を保つための手段になっていることがあります。全部を奪うのではなく、切り替えのきっかけを一緒に作る。終わったあとに一言声をかける。そのくらいの関わりで、子どもの心は守られます。

焦りが強いときほど、何もしない勇気を

 年末年始が近づくと、3学期のことが頭をよぎります。このままで大丈夫なのか、勉強は間に合うのか、進路はどうなるのか。考え始めると、止まらなくなります。

 でも、焦りから始まる関わりは、うまくいかないことが多いです。今のうちに何かさせなきゃという気持ちは、子どもにとってはプレッシャーになります。やる気は、引き出すものではなく、安心の中で自然に育つものです。

 小さな変化を見逃さないことが大切です。会話が少し増えた、表情が柔らかくなった、興味のある話をするようになった。それは、次に動くための準備が進んでいるサインかもしれません。

 勉強も、一気に取り戻す必要はありません。5分でいい。一つでいい。できたという感覚を積み重ねることが、長い目で見て力になります。

子どもを信じられるようになるために、まず親が休むこと

 よく子どもの不登校のことを相談すると「子どもを信じてあげてください」と声をかけられることもあるでしょう。

 この「子どもを信じる」という言葉は、ときに重く感じられます。ちゃんと待てていない自分はダメなんじゃないか、と思ってしまうこともあるでしょう。

 でも、信じることは、立派で強い親になることを指すのではありません。今日を何とかやり過ごすこと。怒ってしまっても、戻ってこれること。ご飯を一緒に食べること。その積み重ねが、信じるという姿勢につながっていきます。

 そのためには、親が休むことが必要です。休むことは、逃げではありません。守るための行動です。疲れ切った状態では、誰のことも信じられなくなってしまいます

 年末年始は、頑張らなくていい時期です。うまく説明できなくてもいい。誰かに分かってもらえなくてもいい。親子が安心できる時間があれば、それで十分です。

 今は止まっているように見えても、子どもは自分のペースでちゃんと進んでいます。その歩みを信じるためにも、まずは今日、少し休んでください。親が休めることは、子どもにとっての安心であり、未来への準備でもあります


記事の書き手
土橋_人画像

土橋優平(どばしゆうへい)

 2016年に宇都宮大学を中退し、NPO法人キーデザインを設立。2019年からフリースクールを運営、200名以上の不登校の子どもたちと出会う。2020年より無料LINE相談窓口「お母さんのほけんしつ」を立ち上げ、これまで2000名以上の保護者の相談支援を行う。講演会や記事の執筆などを通して『がんばらない子育て』『人を頼ることの大切さ』を伝える活動にも取り組む。2025年、ForbesJAPAN「世界を救う希望100」に選出。

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