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青空せんせい#02 我慢ができない子どもへの接し方で大切なこと

青空せんせい

我慢ができない子どもという不思議な生き物に出会ったことがない人は、おそらくいないのではないでしょうか。

子どもというのはそもそも我慢ができないものです。

しかし、わざわざこの記事を読んでくださっている人は、もしかしたら「ほんっっっっとうに我慢ができない」我が子や職場のお子さんへの対応に戸惑っていらっしゃる方かもしれませんね。今日はそんな我慢ができない子どもたちにどう接したら良いのか、少しおしゃべりしていきたいと思います。

そもそも、「我慢」とは何でしょうか。大人でも我慢をしますね。眠いけど我慢して仕事にいかなきゃ…上司や同僚と衝突してしまったけど我慢して穏便に済まさなきゃ…と、我慢をします。

我慢とは、溢れる欲求を理性で抑えようとしている現象です。

人間の脳は、海馬、辺縁系、大脳皮質という三層のエリアから成っていますが、このうち辺縁系よりも深い部分が「生きるための欲求」を生み出します。

眠いときは寝たいと思いますし、上司から攻撃されれば身を守るために反撃の体制が作られます。しかし、それが社会的に不適切な反応の仕方であることを「大脳皮質」が言語的に理解したとき、辺縁系以下から生じる反応を抑え込みます。これが「我慢」の仕組みです。

子どもが我慢ができないのは、まだ言語的に状況を理解して行動をコントロールできるほど大脳皮質が発達していないためです。

だから、辺縁系の興奮がそのまま感情として現れるのです。それ自体は非常に自然なことで、発達において重要な意味を持ちます。

とはいえ、親御さんや先生は我慢ができないと困ってしまいますよね。ところ構わず叫んだり暴れたり友達に攻撃したり…

つい「だめでしょ」「もうやらないって約束しなさい」「何度も言ってるでしょ」と怒りたくなります。

その気持ち、よーくわかります(笑)

でも、少し前述の文章を読み返してみてください。我慢ができないのは、大脳辺縁系からの危険信号(アラーム)が皮質によるコントロール能力を上回っているからです。つまり、そのお子さんの脳はまだ我慢をするために十分な機能が発達していない可能性があります。

あるいは、脳の奥深くの中心部から発せられる危険信号があまりにも強力で、抑え込むことができないのかもしれません。

では、一体どうすればよいのでしょうか。

それは、我慢させないことです。もちろん、命に関わることや他者を傷つける行為は体当たりをしてでも止める必要があります。安全を確保することは大人の義務です。でも、「出してはいけない感情」というものはありません。怒りだって、喜びや感謝と同様に自由に体験してよい感情なのです。日本の文化では特に自分のネガティブな感情を出すことを許容しない風潮がありますが、これは非常によくありません。

なぜなら、人間の脳は三層から成り立っていると書きましたが、ストレスが限度を超えると脳の中で、三層をつなぐネットワークが断裂してしまうことがあるからです。専門的には、これを「解離」と呼んでいます。

溜まり切った不快感情は本来言葉にして他者と分かち合うことで解消されていくというのが健康的な対処法ですが、「我慢しなさい」と言われてしまうと感情のやり場がなくなるため、脳の中では解離が起き、不快感情が脳の奥深くにため込まれていきます。これがのちに自己肯定感の低さや、時にフラッシュバック、暴れる(過覚醒)などの表面化する問題を引き起こします。
 

そして、それを大人は「皮質レベル(言語的)」に理解させようとして「〇〇だから駄目なんだよ」と言葉で納得させようとします。

と…もうお気づきかもしれませんが、意味、ありませんよね。泣

だってその子の脳はもうアラートが鳴り散らかしていて、言語で抑えることなんて出来ないからです。だから「安全に感情を表現する」ことが必要なのです。そのために大人ができることが「共感すること」です。

感情を出してよいというのは、物に当たり散らかしたり人に暴言を吐いたりすることを許すという意味ではありません。それは「放置」です。しかし、子どもが助けを求めてきた時点で「つらかったよね」「怒ったんだよね」「物を壊しちゃったのはよくないけど、それくらい怒ってたことはわかったよ」と共感し、辺縁系以下の脳の部位に眠る圧力を下げてあげる方が、健康的です。

皮質レベルで理解して感情を制御することをトップダウン、辺縁系以下の興奮を鎮めることで感情を制御することをボトムアップと言います(大河原2016)

トップダウンで感情を抑え込むより、共感してもらったり体を動かしたりしてストレスを解消するボトムアップの方が人間としてははるかに健康的で、最終的に問題を先送りにしなくて済みます。何より、解離的な過剰適応(無理すること)を避けることができます。

もちろん、すでに深刻な解離が起きている場合やPTSDの領域に入ってしまった子どもを共感だけで救うことはできません。それは認知行動療法やEMDR、BSPなどといった心理療法でプロによる介入が必要です。

とにかく今日のお土産にしてほしいのは、「感情をコントロールさせるためには言葉で叱るのではなく、怒りの原因に共感し、それを適切な形で表現させてあげてください」という一言に尽きます。

※私の臨床経験上、共感してもらった度合いと我慢できる度合いはほぼ比例しているような感じがあります。

いつか研究して数値化したいものですね。

長々読んでいただきありがとうございました。

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