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【解説】不登校の子に多い「起立性調節障害」ってなに?

わかりやすく解説サムネ2

「朝起きるのがしんどい」
「最近、立ちくらみがひどいんだよね」

不登校、行き渋りをする子どもからこんな言葉を聞くことはありませんか?
もしかしたらそれは起立性調節障害かも。

 中学生における有病率(人口中、その病気を持っている割合)は軽症を含め10%程度といわれています。思春期に発症しやすく、午前に症状が強いため、学校生活に支障をきたすことも。

 不登校の児童生徒の約3-4割に起立性調節障害が併存するともいわれていることから、家族だけでなく学校の理解も大切になります。発症の早期から重症度に応じた適切な治療と家庭生活や学校生活における環境調整を行い、適正な対応を行うことが不可欠です。

ではこの病気について詳しく解説します。

どんな症状?

 起立性調節障害(Orthostatic Dysregulation:OD)は、立ち上がった時に頭痛、めまい、倦怠感などの症状がでる病気です。症状は、午前に強く午後に軽減する傾向があります。また、立ったり座ったりすると症状が強まり、横になると軽減します。

 雨の前など気圧変化の影響も受けやすいことが特徴です。夜に目がさえて寝られず、起床時刻が遅くなり、悪化すると昼夜逆転生活になることもあります。

症状の例

1.立ちくらみ、あるいはめまいを起こしやすい
2.立っていると気持ちが悪くなる。ひどくなると倒れる
3.入浴時あるいは嫌なことを見聞きすると気持ちが悪くなる
4.少し動くと動悸あるいは息切れがする
5.朝なかなか起きられず午前中調子が悪い
6.顔色が青白い
7.食欲不振
8.臍疝痛(せいさいせんつう)へその周囲の痛みをときどき訴える
9.倦怠あるいは疲れやすい
10.頭痛
11.乗り物に酔いやすい

原因はなにがある?

 起立性調節障害の主な原因は自律神経の乱れで、体を活動的にする交感神経と体をリラックスさせる副交感神経のバランスが崩れることで様々な症状が起こります。

 原因としては体質など遺伝的な要素、思春期による体内のホルモンバランス、学校や友達、勉強などの精神的なストレスなどが挙げられます。遺伝的な要素として具体的には発症した子どもの親も起立性調節障害だったという例もあり、患者の約半数に遺伝の可能性が考えられています。

 他にも朝が苦手な人やよく立ちくらみがする人はもともと自律神経の働きが弱く、発症しやすい傾向にあるといわれています。さらに貧血や脱水、低血圧の人や下肢特にふくらはぎの筋力が低下している方など心臓へ戻る血流量が少ない時、エネルギー不足の時にも発症しやすくなります。

症状が出たらどうすればいい?

 起立性調節障害が悪化すると、午前中だけだった症状が一日中続いたり、起き上がることが困難になったりと、日常生活を送ることさえ難しくなってしまいます。長期的な不登校等にもつながり、学校生活や社会復帰に大きな影響を与えてしまうこともあります。そのため気になる症状が出た場合は早めに病院を受診し、適切な治療を行うことが大切です。

保護者の視点として、家でできることやお子さんと関わる中で大切にしてほしいポイントを2つお伝えします。

軽症の場合はまずセルフケアから

家で実践できることを一覧にまとめましたので、お子さんと話し合いながらできるところから取り組んでみてください。

  • 規則正しい生活を心がける
  • 水分をしっかりとる
  • 筋力低下を防ぐために毎日15分程度の散歩など、無理のない範囲で運動をおこなう。
  • 起立するときには、頭位を下げてゆっくり起立する。
  • 静止状態の起立保持は、1-2分以上続けない。
  • 昼夜逆転を防ぐために眠くなくても就床が遅くならないようにする。

心理的負担を減らす環境調整

 中等症や重症の多くは倦怠感や立ちくらみなどの症状が強く、遅刻や欠席をくり返してしまいます。保護者の多くはこういった症状を怠け癖や夜更かし、学校嫌いなどが原因だと考え、怒ったり無理に朝起こそうとして親子関係が悪化することも少なくありません。

 起立性調節障害は身体疾患であり、気持ちの持ちようだけで治るものではありません。そのため子どもの身近な大人が理解を深めることが大切です。

 思春期の子どもは様々な心理社会的ストレスを抱えています。そのため心理的ストレスを軽減することが最も重要です。保護者、学校関係者が起立性調節障害を十分に理解し、連携を深め全体で子どもを見守る体制を整える必要があります

まとめ

安心な家族

 上で述べたように、起立性調節障害は身体疾患であり、気持ちの持ちようだけで治るものではありません。周りの大人の理解と支えが必要です。軽症の場合、適切な治療や環境調整によって2〜3ヶ月程度で改善することもありますし、症状が重たい場合や適切な対処が難しい場合、症状の改善、また社会復帰に数年かかることもあります。保護者のみなさんに大切なのは、ゆっくり焦らず対応していくことです。医療機関等を頼りながら、お子さんのペースに合わせて、じっくり向き合っていきましょう。

参考情報

▼不登校の子どもに見られる他の症状
(過敏性腸症候群)

▼医師会と共同制作した不登校ガイドライン

ガイドライン表紙