このゴールデンウィーク明けの時期は、こんな声を聞くことがよくあります。

「4月は頑張って登校していたんですが、ゴールデンウィーク中に休んだからか、気持ちが滅入ってしまったのか、休み明けに全く朝起きられなくなってしまって」
ゴールデンウィークが終わった最初の朝
「今日は体が動かない」
「学校のことを考えるとお腹が痛い」
と布団から出られなくなる子がいます。
4月には毎日制服に袖を通し、教室で笑顔を作れていたはずのわが子が急に立ち止まる――そんな姿を前にすれば、親が戸惑いを覚えるのは当然です。
「また振り出しに戻ったの?」と胸がざわついたら、まずは驚く自分の気持ちをそのまま認めてあげてほしいと思います。
4月、子どもたちは「今年こそ頑張ろう」と知らぬ間にアクセルを踏み込み、慣れない教室や初対面の先生、座ったばかりの席で全力で適応してきました。
登校前に「ちゃんと笑えるかな」と深呼吸し、休み時間は「輪に入らなきゃ」と頬を引きつらせて笑い、帰宅後は「忘れ物したら怒られる」と時間割を何度も確認する――そんな小さな努力の積み重ねが「学校に行けている」姿の裏側にあります。
だからこそ大型連休は、張りつめた糸を一気にゆるめるスイッチ。糸が緩んだ瞬間、体と心は「もう少し休ませて」と本音を漏らすのです。
登校を渋る朝に親からかけてほしいのは「そっか、しんどいんだね」というひと言です。
「明日は行ける?」
「いつから行ける?」
とゴールを決めようとすると、また糸を強く引き絞ることになり回復が遅れる場合があります。
家での合言葉は「いつも通り」。
朝は「おはよう」、昼は「おなか空かない?」、夜は「お風呂どうする?」と生活の骨格だけを保ち、勉強は後回しで大丈夫です。
好きなゲームや動画に没頭する“ダラダラ時間”はエネルギーを補給する大切なタンク。ときどき「ぐっすり眠れた?」「その動画のどこが面白かったの?」とさりげなく尋ね、親子で関係性を育んでいくことで、ふとあるとき
「席替えで隣が誰になるか怖い」
「友達に“休みすぎ”と言われそう」
「宿題を出せないのが申し訳ない」
など本音のかけらがこぼれることがあります。
うなずき一つでも「分かるよ」と受け止めれば、子どもの心の温度はじわりと上がります。連休明けの不調は4月の努力と同じだけ大きなバネ。バネは一度縮むことで、次に伸びる力を蓄えます。
親御さん自身のケアも忘れないでください。
不安や焦りは家族以外の友人に打ち明けたり、専門窓口に相談したりして外へ逃がしましょう。甘いお茶を一杯飲んで深呼吸し、大人が落ち着きを取り戻す姿を見せること自体が「家は安全だよ」という、子どもへの無言のメッセージになります。
ゴールデンウィーク明けに子どもが足踏みをするのは、4月の努力が形を変えて表れたということ。
「せっかく行けていたのに」ではなく、「ここまでよく頑張ってきたね」と声をかけてみてください。
穏やかな日常を続け、子どもの今の気持ちに耳を澄ます――それだけで心のエネルギーはまた満ちていきます。
やがて「そろそろ動こうかな」という瞬間が来たら、心の中で小さくガッツポーズを。それまでは親子で心を休める時間として、そよ風を送り続けてあげてください。

土橋優平(どばしゆうへい)
2016年に宇都宮大学を中退し、NPO法人キーデザインを設立。2019年からフリースクールを運営、200名以上の不登校の子どもたちと出会う。2020年より無料LINE相談窓口「お母さんのほけんしつ」を立ち上げ、これまで1000名以上の保護者の相談支援を行う。講演会や記事の執筆などを通して『がんばらない子育て』『人を頼ることの大切さ』を伝える活動にも取り組む。2025年、ForbesJAPAN「世界を救う希望100」に選出。
「昨日は子どもが学校に行くと言っていたんですが、やっぱり動けなくて。私もどうかなと思ってはいたんですが正直ショックです」