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【解説】普通教育機会確保法とは?学校以外の多様な学びを認めた法律

解説記事サムネ_普通教育機会確保法

はじめに

 不登校の子どもを持つ保護者にとって、「学校に行けないことで将来に影響が出るのでは?」という不安は大きいものです。しかし、2017年に施行された「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保に関する法律」(通称:普通教育機会確保法)によって、不登校の子どもが学びの機会を失わないための制度が整備されました。

本記事では、普通教育機会確保法の概要や成立の背景、この法律の施行によって生じた社会の変化や課題について解説します。

普通教育機会確保法とは?

この法律は、学校復帰を目的とせず、子どもの多様な学び方を尊重し、フリースクールやオンライン学習の活用など、新しい学習の形を社会的に認めることを目的としています。主なポイントは以下の通りです。

  • 不登校の子どもに対して、学校以外の学びの場(フリースクールやICTを活用した自宅学習など)を認める。
  • 学校が不登校の児童生徒に対して適切な支援を行うよう努力義務を課す。
  • 学校復帰を強制するのではなく、子どもの多様な学び方を尊重する。
  • 市町村が学びの場の選択肢を広げ、学習支援を提供する体制を整備する。

 これによって、不登校の子どもも「学ぶ権利」が保障されるようになり、学校以外の選択肢が広がりました。

法律成立の背景

 普通教育機会確保法が制定された背景には、不登校児童生徒の増加と、彼らが適切な学習機会を得られずに社会的に孤立してしまう問題がありました。特に1990年代以降、不登校は単なる個人の問題ではなく、教育制度全体の課題として認識されるようになりました。

 従来の教育制度では、学校に通えない子どもたちに十分な学習支援が行われず、多くの親子が孤立を感じる状況が続いていました。そのため、文部科学省を中心に学校外の学びを保障する動きが強まり、2017年にこの法律が施行されることとなったのです。

普通教育機会確保法のメリット

 この法律があることで、不登校の子どもやその保護者にとって以下のようなメリットがあります。

1. 学校以外の学びの選択肢が増える

以前は「学校に行かない=勉強が遅れる」という考えが一般的でしたが、普通教育機会確保法によって、フリースクールやオンライン学習など、学校以外の学びの場が法的に認められるようになりました。そのため、子どもに合った学び方を選ぶことが可能になってきています。

2. 学校復帰を強制されない

法律では「学校復帰を前提としない支援」が求められており、無理に学校に戻ることを強制されることはありません。子どもが安心して過ごせる環境で学ぶことが重視されているため、保護者も「無理に登校させなければならない」というプレッシャーから解放されやすくなってきています。

3. 学校との連携が進む

学校は不登校の子どもに対して適切な支援を行う努力義務を負うことになりました。そのため、個別の教育計画の作成や、学校とフリースクール、家庭との連携が進み、より柔軟な支援が期待できます。

4. 市町村による支援体制の整備

法律により、市町村が不登校の子どもに対する学習支援の体制を整えるよう求められています。これにより、地域ごとに相談窓口や学習支援センターが設置されるなど、保護者が支援を受けやすくなっています。

いまだに根強く残る学校復帰前提の考え方

 普通教育機会確保法の施行から数年が経ちましたが、いまだに学校復帰を前提に子どもと関わる考え方が根強く残っています。まだまだ多くの教育現場では、この法律が求める「子どもの多様な学び方を尊重する」という視点が十分に浸透していません。そのため、不登校の子どもやその保護者が適切な支援を受けられず、孤立してしまうケースが依然として存在します。

 また、学校復帰を目標とする対応が主流のままでは、フリースクールやオンライン学習といった選択肢が十分に活用されないままになってしまう可能性があります。法律の理念を社会全体に浸透させるためには、教育機関だけでなく、保護者や地域など社会全体の意識改革も重要です。

まとめ

 普通教育機会確保法の施行によって、不登校の子どもでも学ぶ権利が保障され、学校以外の学びの選択肢が広がってきました。しかし、法律の理念がまだ十分に認識されず、学校復帰を前提とする考え方が残っている現状もあります。

 不登校は決してそれ自体が悪いことなのではなく、新たな学びの形を見つける機会でもあります。お子さんの状況に合わせて、無理なく学べる方法を探し、必要に応じて自治体の支援を活用してみてください。また、社会全体でこの法律の趣旨を正しく理解し、不登校の子どもとその保護者が孤立しない環境を整えていくことが求められています。

参考資料:

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