企業内の「不登校離職」にお困りの方はこちら

【解説】不登校離職ってなに?企業にできる対策は?

不登校離職解説

不登校の子を持つ保護者、4人に1人が休職・退職

2024年〜2025年にかけてそんな文言がネット記事やSNSを騒がせました。

会社経営をしている方や人事担当の方の中には、聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。

大手、中小関わらず経営者や役員、管理職の方に「不登校離職という社会問題がありまして」とお話しすると「あ、うちでも過去にあったよ」「今職場にいるんだよね、子どもが不登校で遅刻が増えているスタッフ」というリアクションをいただくことがよくあります。

テレビでも毎年取り上げられる、不登校の小中学生の人数。
11年連続で増えており、2024年に文部科学省が発表では約34万人となっています。病欠や経済的事情などの子どもたちも含めると実は小中学生の20人に1人が長期欠席をしていることがわかっています。

例えば、子育てをする従業員が60人いる会社の場合。
そのうち4人が不登校、うち1人が不登校離職のリスクが。

不登校はもう遠い世界の話ではありません。

今回は、不登校からなぜ離職につながるのか、また離職後の影響や、企業としてできることについて記します。

不登校離職をする理由、第1位は?

 不登校離職を経験する保護者にその理由を聞いてみるとグラフのような結果が出ました。(複数選択可・回答数67名)

 最も多かったのは「子どものサポートに集中するため」「子どもを1人家にいさせることの不安から」と子どものための決断が第1位、第2位を占めました。

 不登校が始まる頃の子どもたちの中には、外出することや人と会うことに抵抗を強く持つようになり、家もしくは自室にこもる子も多くいます。低学年の子ども気持ちが不安定な子どもを家に一人で置いておくことは、親にとっては気が気でない状況です。仕事中も集中できず、ずっと頭の中には子どもがいます。「今日はもう起きたかな」「今何しているんだろう」「勉強してるかな」「何か思い立って行動していたりしないかな」そんな不安なことでいっぱいになるのです。

 不登校が長引くことで、「いつまでこの状態が続くのだろう」「遅刻や欠席で対応してきたけど、いっそのこと仕事から離れて家にいて子どもに集中したほうがいいのだろうか」と考えるようになります。その結果、不登校離職となるのです。

親自身のメンタルの不安定さも、実は大きな課題に

 上記のグラフでは、第3位に「親自身のメンタルが不安定になったため」62.7%と出ています。心の面への影響について聞いてみるとこんな結果となりました。

 「特に心の不安定さは感じていない」8.5%を除くと、91.5%が何らかの心の不安定さを感じていることがわかります。1割の保護者がうつ病などの診断を受けており、2割を超える保護者が医療機関を利用しています。

 保護者がこれだけ心の不安定さを訴えるようになることの背景には、もちろん子どもの将来への不安や子どもへの対応疲れもありますが、実は周囲の無理解も大きく関わっています。実際の声をご紹介します。

小5の時に登校渋りがはじまり、担任・主任の不適切な対応が続きました。面談ではだだのわがままと言われ、朝の迎え登校、泣いて暴れる子どもを担いで主任の車に無理矢理乗せるなど。子どもは複雑性PTSDと診断されました。息子は中1になった今も学校へは1日も登校せず、今でも先生に追いかけられる夢を見たり、先生にされたことを思い出して泣くことがあります。

主人は元々子育てにはほとんど関わらない人です。子どもが不登校になってからは「お前が甘やかすから不登校になったんだ」と言われ、夫婦間では全く相談できる状態ではありません。

義父は、子どもが学校に行かなくなってから、よく家に来て、子どもに無理やり勉強をさせるようになりました。来られない日は電話が来て「ちゃんとやっているか」と確認が入ります。子どもは「つらい」と言い、義父は「親がちゃんとさせるんだ」と言い、板挟みで本当に苦しいです。

 実はこうした周りの無理解によって「こうなったのは私のせいなんじゃないか」と自分を責めるようになり、「誰に相談しても、結局私が頑張らないと何も変わらない」と自分一人ですべての責任を負うようにもなっていきます。これは学校や親族だけに限った話ではありません。

会社の中で孤立する不登校の親

こうした無理解による保護者の苦しさは、実は会社の中にもそのタネが潜んでいます。

相談して、”かわいそうがられる”ことが、親として育て方や接し方を否定されているようで、とても気持ちが沈みました。

同僚や上司は、立派に子育てされている方ばかりでした。職場は教育機関でしたから、親に責任があるという捉え方だと感じていました。だから私の評価が下がったと感じていました。辛かったです。だんだん自分を出せなくなっていきました。

「〇〇させたら」と助言されて、不愉快なきもちになるだけだった。更に別の人にも噂として広がっていく懸念があり、人を選ぶべきだったと、今はとても反省している。

 こうした理解のない言葉や関わりによって、心が傷つき、周りの視線も気になり、会社の中で孤立。遅刻早退欠勤などで迷惑をかける申し訳なさや子どもへの日々の繊細かつ終わりの見えない対応によって、どんどん疲弊していくのです。それが不登校離職につながります。実は離職した後にも、さまざまな問題が起こります。

「大人とふつうに会話がしたい」

 実際に不登校離職をした保護者の多くにヒアリングをさせていただくと、何度も耳にする言葉がありました。「大人とふつうに会話がしたい。いつの間にかそう思うようになりましたね」と。

 子育て・教育について方針が異なる身内とのやり取り、学校との連絡調整、医療機関やその他支援機関とのやり取りなど、家事だけでなくそれ以外も含めて1人の肩にのしかかります。そんなストレス過多な状況で、顔を合わせる相手と言えば、心が不安定になっている子どもです。

 子どもの口から希死念慮、自己否定の言葉が出ているケースも多く、そうすると親としては自分自身の一つ一つの言葉や行動に気を遣いますし、子どものそれにも常に意識を張り巡らせて生活するようになります。

これまでは会社に行けば会えていた同僚も今はいません。通勤途中に寄っていたコンビニやスーパーも、今は子どものことを思うと、ふらっと自由に行けるわけではありません。不登校離職によって社会から孤立してしまうのです。

結果出てくる言葉が「大人とふつうに会話がしたい」になるのです。

不登校離職防止のために会社ができること

 「働く」というのは「社会とのつながり」でもあります。子どもが不登校になっても離職せずにすんだ保護者の声をご紹介します。

上司との面談の際に親身に聞いてくれ、朝から精神的に辛い時があることを知ってもらえて少し楽になった。時差出勤制度ができる前は、毎朝のように電話で時間休を申し出て母子登校し、その電話が苦痛で子にも寛容になれず辛かったが、時差出勤開始後は精神的に余裕ができた。

自身の環境や子供のことをヒアリングし状況を把握してくれて、一旦少し休むことも提案してくれた。会社の福利厚生が充実していたこともあるが、その時に関わってくれた人が理解があり、今でも感謝している。一部の人しか詳細を知らせないでいてくれた配慮もありがたかった。

同僚に仕事を交代してもらい、朝遅い時間に出勤している。落ち着いた気持ちで子供に対応できて助かっている。

 もちろん制度は大切です。ですが制度があっても、職場の理解がなければ、制度を利用しようとも思えませんし、そもそも「ここで働き続けたい」と思えません。

こちらのグラフは「社内での相談の満足度(5段階評価)」と離職者の割合の結果をクロス集計したものです。低い満足度「1」「2」では離職率40.26%なのに対し、高い満足度「4」「5」では離職率21.95%となっており、相談満足度が高ければ高いほど離職率は低いということがわかります。

 必要なのは理解のある風土支えられる制度(取組み)です。まず大切なのは、不登校子育てがどれだけ大変なのか、どれだけ孤独なのか、またそうした状況の子どもにとって必要な支援が何であるかを理解することです。その上で従業員同士の声掛けや制度で働きやすい職場をつくることが大きな支えになります。

 多くの保護者は、積極的に「子どもが不登校なんです」とは言えません。言ったときにどんなリアクションがくるだろうと考えると不安でいっぱいになるからです。だから会社が積極的に「不登校の子育てに苦労している従業員がいたら支えます」とメッセージを届けていくことが必要です。

不登校は「学校に行きなさい」では解決しない

 全国に約50万人いる長期欠席の小中学生。「学校に行きなさい!」「どうすれば学校復帰できるか」多くの保護者や支援者がその視点でこの数十年、子どものサポートをしてきました。ですが、この少子化の中で不登校の子どもは増加の一途をたどっています。

実は「学校に行きなさい」が本当の不登校の解決ではないのです。

国の不登校支援の方針は変化してきており、2017年には「普通教育機会確保法」という法律も施行され、「学校復帰」ではなく「社会復帰」を目標としています。社会復帰、それはつまり学校以外の学び場の重要性を示しています。

  • 「学校に行きなさい」がダメ? じゃあどうするの?
  • 学校以外の学び場ってなに? どういうところがあるの?
  • 子どももそうだけど、親と関わる時に大切なことってなに?
  • 会社としてどんな制度をつくると良いの?
  • 職場での理解を深めるために、会社はどうしたらいい?
  • もし職場で相談を受けたら、どうサポートすればいい?

ここまでご覧いただいたみなさんの頭の中には、このようなたくさんの疑問が沸いていると思います。関心を持ってくださり、本当にありがとうございます。

不登校の子どもの中には、自死を選んでしまう子もいます。
それは「不登校だから」ではありません。

不登校の子を持つ保護者の中には、「子どもを愛せなくなりました」という方もいます。
それは「不登校だから」ではないのです。

「不登校」への無理解、周りからの心無い言動、素直に「助けて」と言えない空気、そうした社会環境に課題の本質があります。

ぜひ一緒に解決のために取り組みませんか?
私たちは「不登校をきっかけに社会から孤立する親子をゼロにしたい」と思い、企業のみなさまと一緒に取り組んでいきたいと強く思っています。

そんな思いから生まれたのが、不登校離職防止のためのサービス「おやケア」です。

私たちは現在、子どもの不登校に悩む保護者向けのLINE相談窓口「お母さんのほけんしつ」を運営しています。全国から4,600人を超える保護者の登録があり(2025年2月時点)、日々30〜60人と相談のやり取りをしています。

こうした経験から生まれたサービス「おやケア」では、不登校離職防止のための研修実施や、社内アンケート調査によるリスク評価、弊社チャット相談窓口による個別サポート制度設計のお手伝いなど様々な支援策をご用意しています。

研修を実施した会社の従業員の方より下記のような感想をいただいています。

私自身、不登校や職場への出勤がつらかったという経験があります。今日の話を聞いて、自分が悪い・ダメなやつだと思っていましたが、今日の話を聞いて救われ、気持ちが軽くなりました。

不登校=マイナスのイメージがありましたが、今回の研修を聞いて、他の学びの場があるし問題ではないことが認識できました。親が仕事や家事でいっぱいいっぱいになってしまうと、子どものことにも余裕を持って向き合うことが難しくなるので、親の休養やストレスの吐口は大事だなと思いました。

管理職として、伴走者の位置付けで対応していくという学びを得ました。具体策も教えていただき、現場で活かせるものと思いました。

関心を持ってくださった企業のみなさまは、ぜひお問合せください。
みなさまの大切な社員一人ひとりが安心して働き続けられる会社づくりに貢献します。

個人のみなさまからの寄付も募集中

 私たちの運営する保護者向けのLINE相談窓口や子どものための居場所には、自治体からの助成・補助は一切ありません。全国を見ると地域によっては助成が出る地域もあるのですが、私たちの地域ではまだ理解も浅いため、私たちは利用者からいただく利用料(フリースクールなど有料。LINE相談は完全無料)や、銀行からの融資などを受けて取り組んでいる状況です。

 私たちの取組みは、100名以上の寄付サポーターの方のおかげで継続することができています。ぜひこの機会に寄付サポーターになっていただけませんか?

毎月1,000円からの継続寄付や、単発寄付などさまざまな寄付の方法があります。

社会から孤立する親子を寄付で支えていただけないでしょうか。子どもたち一人ひとりが安心して教育を受けられる社会を目指して、ぜひこの機会に仲間になってください。

運営法人について

「おやケア」を提供するNPO法人キーデザインは2016年に設立された、不登校の親子の支援をするNPOです。不登校の子の保護者向けチャット相談窓口としては全国最大規模の「お母さんのほけんしつ」を運営し、これまで4,000を超える親子に関わってきました。

メディア掲載

新聞毎日新聞、読売新聞、産経新聞、東京新聞、朝日新聞、下野新聞、デーリー東北
テレビNHK「おはよう日本」、NHK午後LIVEニュースーン、NHK宇都宮「とちぎ630」、青森テレビ「ターニングポイント」
ネットメディアYahoo!ニュース、東洋経済オンライン、現代ビジネス、プレジデントオンライン、NewsPicks、FNNオンライン、産経ニュースなど
週刊誌など週刊女性

講演会・執筆

国、自治体など厚生労働省「ひきこもりVOICEキャラバン」、栃木県青少年育成課、栃木県子ども政策課、富山県総合教育センター、鹿沼市東部青少年育成市民会議(栃木県)、栃木県地方議会女性議員連盟
民間団体一般社団法人宇都宮市医師会、朝日新聞グループ朝日エージェンシー、八戸市連合PTA、チャイルドライン栃木
執筆教育新聞(連載)、不登校新聞(連載)、不登校オンライン(連載)、しんぐるまざーすふぉーらむ会報

2021年にはジャーナリスト堀潤様より取材していただき、その映像がYouTubeにアップされています。