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おたより#005 「私は親失格だ」と自分を責めていませんか?

おたよりサムネ005

「言ってはいけないこと」はあっても、「思ってはいけないこと」はない

 子どもが不登校になったとき、なかなか状況が改善されないと親は「子育てが嫌だ」「子どもを嫌いになりそう」「もう親をやめたい」といった気持ちになることもあると思います。

 そうした気持ちを抱えるたびに、「こんなことを考えてしまう自分は最低だ」と自分自身を責めてしまうこともあるでしょう。自己否定の考えに、自分が押しつぶされそうになることがあります。

 しかし、実際には「言ってはいけないこと」「言わないほうがいいこと」はあっても、「思ってはいけないこと」など存在しません。どんな感情も、それを抱くこと自体は自由であり、人として自然な心の動きなのです。

 「こんなことを思ってはいけない」「親失格だ」と自分を否定すればするほど、苦しさは増していきます。なぜなら、自分の思いを否定することは、自分自身を否定することと同じだからです。

自分を許すことは子どもを受け止めること

 まずは「今の私にはこんな気持ちがあるんだな」と気づき、それを否定せずに受け止めてあげてください。すると少しずつ、「こんなふうに感じてもいいんだ」「こんな自分でもいいんだ」という安心感が生まれるはずです。

 実際、思いを口に出すかどうかは別として、自分の気持ちを素直に認められるだけで、心は軽くなるものです。

 自分を認める姿勢は子どもの心にも大きな影響を与えます。親が「こんな感情を持ってはいけない」と自分に厳しくしすぎていると、子どもは「感情は抑え込むもの」と学んでしまいがちです。

 一方で、親が「どんな気持ちもあっていいんだよ」と自分に言い聞かせるように、日々の中で自分を大切に扱っている姿は、子どもに「自分の気持ちも大切にしていいんだ」と感じさせます。

 これが子どもにとっての安心感や自己肯定感につながり、不登校の状況でも「自分はここにいていい」と思えるきっかけになるかもしれません。

自分の気持ちを受け止めるために、まずできること

 もちろん、頭ではわかっていても実践するのは簡単ではありません。自分を責めてしまうときは、信頼できる人や専門家に自分の思いを打ち明けてみてください。

同じような状況にある親御さんたちのコミュニティや、カウンセラーなどに相談するのも一つの手段です。もしかしたら友人や親族にそうした人がいるかもしれません。

 誰かに話を聞いてもらうだけで、「こんなにも自分は追い詰められていたんだな」と客観的に気づけたり、思わぬところで解決の糸口が見えてきたりすることがあります。

 書き手の私自身も、普段から保護者の方から相談を受ける身です。何よりも大切にしているのは「どんな気持ちでも受け止めてもらえる場所」を提供することです。

 「これを言ったら否定されるかも」「こんな思いは口に出してはいけない」と感じてしまうと、人は心を閉ざしてしまいます。受け止められない思いを一人で抱え続けていると、ますます孤独感や自己否定が強まってしまうでしょう。

 だからこそ、どんな言葉も安心して出せる場所が必要なのです。

ただここにある感情、否定することも肯定することも選ぶことができる。

あなたが感じるどのような思いでも、まずは「そうか、私は今こう思っているんだな」と認めてあげてください。

改めて言います。「言ってはいけないこと」「言わないほうがいいこと」はあっても「思ってはいけないこと」は存在しないのです。

だから、自分を責めなくても大丈夫。

あなたのその感情は、そのままに受け止めて大丈夫。否定せず、受け止めてあげてください。自分自身に「よくがんばってるね」と静かに声をかけてあげてください。

私はそんなあなたを、そしてあなたが抱えるすべての気持ちを受け止めたいと思っています。

 あなたが自分自身を受け入れ、大切にすることは、子どもの心にも必ず良い影響をもたらすはずです。子どもが自分の気持ちを表現できる環境をつくるためにも、まずはあなた自身が「このままでいいんだ」と自分自信を受け止め、できる限り安心できる人や場所を見つけてください。

記事の書き手
土橋_人画像

土橋優平(どばしゆうへい)

 2016年に宇都宮大学を中退し、NPO法人キーデザインを設立。2019年からフリースクールを運営、200名以上の不登校の子どもたちと出会う。2020年より無料LINE相談窓口「お母さんのほけんしつ」を立ち上げ、これまで1000名以上の保護者の相談支援を行う。講演会や記事の執筆などを通して『がんばらない子育て』『人を頼ることの大切さ』を伝える活動にも取り組む。

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